イタリア・ファエンツァ市出身の芸術家、グェッリーノ・トラモンティ(1915~1992)の制作活動の全貌を紹介する、日本では初めてとなる回顧展を開催いたします。
ファエンツァ市は、ヨーロッパでは有名な陶芸の町として、また、マヨリカ焼の産地として古くから知られています。市内には世界の陶磁器を集めたファエンツァ国際陶芸美術館をはじめ、国内随一の施設を誇る国立窯業試験場、さらには多くの陶芸家を輩出してきた国立陶芸学校があり、今もなお、陶芸の発信地としての役割を担っています。
そのファエンツァ市出身のグェッリーノ・トラモンティ(1915~1992)は、陶芸美術学校で陶技の基礎を学びつつ、彫刻や絵画にも関心を寄せました。早くから才能を発揮したトラモンティは、初期にはテラコッタによる彫刻を手掛け、彫刻家としての評価を得ていきます。その後は、陶芸家として、また画家として活躍しながら活動の場を広げていきました。なかでも、マヨリカ焼の技法を駆使して作り出された色鮮やかな額皿や、彫刻的な量感のあるフォルムに結晶が浮き出る釉薬を施した器物、そして色彩と厚手のガラス釉を組み合わせた陶盤などは、トラモンティ独自の様式美を見て取ることができます。また、器物の表面に日記を綴るように文字によるメッセージを描く作品などは、当時の社会の動きやトラモンティの考え方を知ることができ、とても興味深いものがあります。
もう一つの活動を示す絵画は、黒色で縁取りされた独特の表現方法を取り入れて、身近なモチーフを描きながらも陶芸作品に共通する詩的な雰囲気を漂わせています。
本展では、初期から最晩年までのトラモンティの活動の軌跡を、約150点の作品でたどりながら、トラモンティの多彩な創造の全貌に迫ります。