2012年の夢二郷土美術館は、「もっと知りたい竹久夢二」と題し、竹久夢二(1884(明治17)~1934(昭和9))の生涯を「明治」「大正」「昭和」の3期に分け、その全てをご紹介する企画展を開催しています。
「もっと知りたい」第2期の「夢二の大正」では、大正5年(1916)頃から大正12年(1923)頃までをご覧頂きます。
各地で展覧会や画会を開く中、美人画はより成熟し、大正8年(1919)からはお葉(佐々木カ子(ネ)ヨ)をモデルに量感ある肉体を持つ女性像が生まれました。印刷物においても新しい分野の仕事が拓(ひら)け、中でも代表的な仕事の一つとなるセノオ楽譜の初装幀が確認されたのは大正5年(1916)のことです。
セノオ楽譜では装幀を描くだけでなく、詩人としても取り上げられ、大正7年(1918)には、夢二作詩による「宵待草」が同楽譜の106番として出版されました。これは現在でも大正を代表する歌曲の一つに数えられています。
そして大正12年(1923)、夢二は「どんたく図案社」の設立を宣言します。これは印刷所と協力し「あらゆる図案・文案」「あらゆる美術装飾」を請け負うとしたもので、商業美術の分野において、芸術性の高い仕事を成していこうとする試みでした。しかし、同年9月に起きた関東大震災によりその計画は頓挫し、大正時代そのものも実質的に終わりを告げました。
夢二の代名詞として語られる大正期は、仕事の幅が広がり、深みを増した時代です。今回は、大正9年(1920)から大阪時事新報に連載され、存在は知られていながら長らくその行方がわからなかった事から「夢二幻の名作挿絵原画」と呼ばれている小説「凝視」挿絵原画とあわせ、小説「愛の故郷へ」挿絵原画を展示致します。