熊谷守一は明治13年(1880)に、初代の岐阜市長を務めた名士の三男として岐阜県恵那郡付知村(現.中津川市)に生まれ、幼少期を生母と離れ岐阜市で過ごしました。岐阜中学在学中に上京し、東京美術学校西洋画科選科を首席で卒業した後は、農商務省の樺太調査隊への参加、母の死に伴う帰郷と6年間の郷里での山中生活などを経て、二科会を中心に活躍しました。戦後には画壇や俗世間を離れ、明快な輪郭線と平滑な色面による独自の様式を確立して、東京都内の自宅で身の回りの動植物を描き続けました。
本展では、充実したコレクションを誇る愛知県美術館と岐阜県美術館の協力をもとに、両館が所蔵する絵画と関係資料を通じて、初期から晩年にいたるまでの熊谷守一の芸術の軌跡を年代別に紹介。肖像写真の紹介なども併せながら、飾らない性格で人々から尊敬と親しみを集めた97年の生涯をたどる内容で構成いたします。