タイトル等
あなたはどっち?
渋谷 清道 展
会場
ART FRONT GALLERY
会期
2012-02-03~2012-02-19
休催日
月曜休廊
開催時間
11:00~19:00
概要
渋谷清道-あなたは、どっち?

日本画が平面的(フラット)だという概念に、ともすると私たちは捕われすぎているのだろう。平面作品であると同時に襖絵や屏風絵も、空間に配置することをふまえて構成され、描かれる。渋谷清道はこの日本画の持つ空間性を、現代の表現者として意識し、展開させてきた。繊細な手仕事で制作に向かう渋谷にとって、平面も空間を取り込む作品も身体を通じて繋がるひと続きの世界の一部なのだ。

制作のため素材に向き合う時間を十分にかける。日本画を学び、知識と経験をもとに渋谷が手にしてきたのは、和紙に胡粉、顔料など、伝統的に使われてきた画材である。近作では<ねぶた>の山車を飾る紙貼りの技法を取り入れもした。時代を超えて伝えられる素材や手法を用い、そこにインスピレーションを得ながら、現代を見据える鋭敏な感性で独自の詩的な空間世界を開花させている。

作品に物語性を加味してきた渋谷は、これまでも「人魚姫」や「いばら姫」など、幼少期に誰もが親しんだ悲しみや痛みを含んだ物語を作品のモチーフに取りあげてきた。2部屋に分かれるスペースを舞台にした新作では、斧をなくした木こりを主人公にしたイソップ物語「金の斧、銀の斧」を引用した。比喩や諷刺にあふれた寓話を、回転させた円の軌跡をなぞる、スパイログラフの線による抽象的な文様を配して表現した空間は、観るものを空想の異世界に誘うような静謐な白さで満たされている。そこに豊かさを象徴する金と銀の輝きを差し加えて、ひとつの問いを投げかけるのだ。「どちらを選ぶか」。

未曾有の震災は大地も人の心も大きく揺らし、時代に暗い影と課題を投げかけた。私たちが未来にむけて「選択」を求められる岐路に立っていることを、渋谷はひたむきに創る作業を続けながら、寓話に重ね問いかける。

「アートにおける伝統とは創造することであり復活させることではない。」バウハウスで教鞭を取った画家、ジョセフ・アルバースは言った。伝統は単に繰り返すことではない。渋谷にとってそれは自身の手を介し世界との繋がりを新たに築いていくひとつの手段である。スパイログラフが、複雑に見え実は一本の線で繋がっている様に、時間は線をたどるように過去から現在に繋がり影響を与える。創ること、それは途方もない繰り返しの中から生まれている。

神谷幸江
広島市現代美術館 チーフ・キュレーター
イベント情報
オープニングレセプション:3日(金) 18:00-20:00
ホームページ
http://artfrontgallery.com/exhibition/archive/2012_02/754.html
会場住所
〒150-0033
東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟
ホームページ
http://artfrontgallery.com/
東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟
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