足利尊氏(たかうじ)(1305~58)は、下野(しもつけ)国足利荘を本拠とする武家の名門足利氏に生まれ、のちに京都に室町幕府(1336~1573)を開きました。南北朝(なんぼくちょう)の内乱のなかで尊氏は勇猛さと優しさを兼ね備えた名将として武将たちの信望を集め、その子孫は幕府将軍のほかに、東国支配にあたる鎌倉公方(くぼう)として勢威を振るいます。鎌倉公方足利氏は、戦乱の影響でやがて下総古河(こが)へと移り、近世には下野喜連川(きつれがわ)を領しました。平成24年(2012)は、足利氏代々の墓所であり、かつて運慶(うんけい)作の大日如来坐像2体が祀られていた樺崎寺(かばさきでら)(足利市)が、応永20年(1413)に鎌倉公方足利氏によって大々的に整備されてから600年目の節目の年にあたります。そこで本展では、この大日如来坐像をはじめ、全国各地に残る尊氏ゆかりの文化財をとおして、尊氏の人物像を再評価するとともに、足利氏に代表される下野武士の文化的水準の高さを再確認します。