鏑木清方の父・條野採菊は、清方が八歳の時にやまと新聞を創刊しました。当時名噺家であった三遊亭圓朝の人情噺を、新聞の紙面に掲載するため、時には自宅で口演を催すことがあり、清方も楽しんで聞き入りました。その後、圓朝の勧めで画家への道を歩み始めます。十七歳の時に、圓朝の取材旅行に同行し、実直な仕事ぶりは後々まで清方の目に焼きつきました。
昭和五年、清方は、画壇で広く認められるようになり、圓朝へ感謝を表わそうと、今まであまり興味が湧かなかった肖像画に挑みます。圓朝の高座での姿を写し、人となりを加えて《三遊亭圓朝像》を描き、高く評価され、平成十五年には重要文化財に指定されました。
本特別展では、三遊亭圓朝に関わる作品を中心に、寄席や芝居に取材した作品をご紹介します。