明治と昭和にはさまれた大正時代は、それらとは異なる独自の文化が育まれました。第一次世界大戦がもたらした経済的な繁栄を背景として、大正デモクラシーに代表される民主主義運動が高まり、自由な気風のもと大らかな大衆文化が広がりました。個性が重視されるようになり、新しい価値観が生まれ、日本画壇にも変革の波が押し寄せます。
大正3年、横山大観らが官設の文展を離れて日本美術院を再興したのをはじめ、自由と個性の尊重を掲げた鏑木清方らの金鈴社、文展の審査に不満を抱いた榊原紫峰ら京都の若手画家による国画創作協会など、大正の日本画壇では多くの団体や研究会が設立されました。明治40年から続いていた文展は改革を目的として大正8年に帝展へと改められ、画家たちはそれぞれに自己の絵画表現を追求し、時代の雰囲気を取り込んだ自由で多彩な作品を数多く生み出したのです。
本展では、日本画にとって新たな時代となった大正期の作品を展示いたします。画家たちが自身を見つめ、熱意をもって制作した名品をご覧ください。