フランス象徴派を代表する画家であり、日本でも人気が高いモーリス・ドニ。自らも敬虔なカトリック教徒であったドニは、優美な曲線と神秘的な色彩によって、平和で幸福なイメージを身近な光景のなかに描き込みました。
ドニの作品には、子どもや家族の親密な情景が頻繁に登場します。パリ郊外の自宅や、ブルターニュでのヴァカンス、海外旅行まで、あらゆる場面でドニは愛する子どもたちを描きました。ある時は神話や聖書の物語のなかに、ある時は装飾画のなかにも、その姿を発見できます。ドニにとって「子ども」という存在は、家族の枠組みをこえた「生」の象徴であったといえるでしょう。
本展は、作品に描かれたドニの家族や子どもたちの成長をたどることで、その芸術の変遷を再考する日本で初めての試みです。フランス内外の美術館、個人所蔵の作品に加え、最新の研究によって新たに発見された初公開の作品も多く出品されます。