本展では、何でもない日常から出発して、意表をつく世界を生み出す2人の作家を紹介します。画家・日高理恵子は自宅の庭にある百日紅(さるすべり)を見上げ続け、ほとんど金工細工による細密な線刻画のような世界を描き出します。映像作家・さわひらきは、見慣れた自分の部屋の中に、辺境の地をらくだ、ぞうなど動物が旅して回る光景を導入し、部屋を未知の場所へとつくり変えます。
冬の大山崎山荘にはゆったりとした時間が流れています。忙しい日々から離れ、山荘にひととき身を置くことで、豊かな日常を取り戻す感覚にスイッチを入れる。本展は当館ならではの時空間を活かした展示をご覧いただきます。さわの映像作品は山荘である本館にて展示します。重厚な木を用いた部屋のアンティークな雰囲気と軽妙な味わいの映像作品を合わせてお楽しみください。樹を見上げて描いた日高の絵画は、安藤忠雄建築の新館、天窓がある空間にて展示することで、樹の枝が空に向かって突き抜けていくような印象を与えることでしょう。
また、日高作品は池の水面を見下ろして描いたクロード・モネの名作『睡蓮』と同じ空間にて展示します。2人の視点の違いや色による表現の違いにも着目ください。