南桂子(1911~2004)は、富山県に生まれ、戦後になってパリとサンフランシスコで活躍した銅版画作家です。鳥、樹、少女などをモチーフにした作品は、ニューヨーク近代美術館やユニセフのカードに採用され、世界中の人々に愛されてきました。
生誕100年を記念する本展では、三人の詩人のご協力を得ました。南桂子と交流のあった谷川俊太郎氏の詩数篇を銅版画と並べるほか、若くして詩人として活躍中の、蜂飼耳氏、文月悠光氏のお二人には、それぞれが選んだ南作品にあわせて新作を書き下ろしていただきました。心の奥へ、記憶の彼方へといざなう魅力的な銅版画が、現代の詩と世代をこえて、時には朗らかに、時にはせつなく、響き合います。
このほか今回は、スケッチブックから南桂子の抽象画を初公開するのをはじめ、70年代に制作した作品集、装画類、本人が作品集に掲載しようと思っていた幻の作品画像、本人の作業机などを展示します。銅版画、油彩、ドローイングと合わせて約60点の構成です。南桂子の豊かな才能と画業を発見するきっかけになれば幸いです。
なお4月から、初の本格的な全国巡回南桂子展(京都、高岡、吉祥寺、佐倉、館林)が予定されています。