本年は、チェコ出身で、フランス19世紀末を彩ったアール・ヌーヴォーの代表的な作家アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)が誕生して、150年目の節目の年に当たります。これを記念して、国内最大のミュシャ・コレクションを所蔵する堺市は、チェコ国立美術館、オルセー美術館等の日本初公開作品を含む約170作品によって、その波乱に満ちた生涯と作品を顧みる展覧会を開催いた
します。
咲き乱れる花々と優美な女性の姿態をモティーフにしたミュシャ特有のスタ
イルは、現在でも高い人気がありますが、彼の正式名がチェコ語の「ムハ」で
あることや、後半生を祖国とスラヴ民族の再生のために捧げたことはあまり知
られていません。しかし、見る人に強く語りかける晩年の作品では、フランス
で叶わなかった画家「ムハ」自身の夢が実現しているのです。
本展では、フランスで制作された美しいポスターや装飾パネルの他に、プラ
ハ市立美術館蔵《誠実―ヤン・アーモス・コメンスキー》(1911年)をはじめとするプラハ市民会館市長ホールの壁画の油彩原画8点や、日本初公開とな
る野外劇《同胞のスラヴ》のための4展の下絵(1925-26年)、チェコで制作されたポスターなど、晩年の主要な創作活動もご紹介します。
美しい装飾文様に包まれた女性たちを描く「ミュシャ」と、祖国と民族への
夢にあふれる「ムハ」が生み出した、たぐいまれな芸術をお楽しみください。