古来より人は、呪術、儀礼、宗教的な目的から、自分自身の姿―人の形―をかたどってきました。人の姿には、衣服や顔の表情は言うまでもなく、何気ない仕草のなかにさえ、深い感情の揺れや心の機微を感じることがあります。古今東西、人の姿形には、わたしたちの感情に訴える何かがあるようです。
昭和初期、プロやアマチュアといった垣根を越えて、新しい人形を創作していこうと情熱を傾けた人々も、こうした「人の姿」によって豊かな感情を表現していこうとした人々でした。東京国立近代美術館工芸館では、創造に目覚めた新しい人形制作の展開を注視し、人形をコレクションの重要な柱として位置づけ、収集を続けてきました。コレクションの中心は、戦後に制作された作品ですが、昭和初期に創作人形の運動を担った中心的な作家たち―平田郷陽、堀柳女、野口光彦ほか―の作品が多数含まれています。
本展では、創作人形の流れを工芸館のコレクションで辿るとともに、近年収集が充実してきている、さらに若い世代の作家の作品も加え、「人の形」がどのように表現されてきたのかをご覧いただきます。