当館では、2008年秋に特別展「木食応其(もくじきおうご)」を開催し、豊臣秀吉による天下統一のなかで、京都と紀州で活躍した高野山の僧・木食応其(1536~1608)の事績を紹介しました。一方、この展覧会によって、応其の側近として活躍した僧・覚栄(?~1622)の存在が明らかになり、その後の調査で、覚栄に関連する資料が京都・安楽寿院に残されていることを確認しました。安楽寿院は、京都市伏見区竹田にある真言宗智山派の寺院で、保延3年(1137)、鳥羽上皇によって鳥羽離宮の東殿の一部に創建された御堂が始まりとされています。覚栄は、安楽寿院の塔頭の一つである遍照院の住職を勤めるとともに、天正18年(1590年)に安楽川(紀の川市桃山町)に創建された興山寺の住職も勤めています。
この特別展では、これまでほとんど知られてなかった覚栄という人物に焦点をあて、その事績を明らかにするとともに、活躍の舞台となった京都・安楽寿院や紀州・安楽川地域を中心とした、覚栄ゆかりの地に残された文化財を紹介します。