奈良に春を呼ぶとされる東大寺二月堂の「お水取り」。行事中に井戸(若狭井)から水を汲み、本尊に供えることからそう呼ばれますが、正式な名称は修二会です。修二会とは旧暦二月に行われた法会のことで、東大寺では現在、三月一日から十四日にかけて行われています。
修二会では、練行衆と呼ばれる僧侶が十一面観音に過ちを懺悔して除災招福を祈る、悔過という行法が行われます。この行法は、東大寺の実忠和尚が天平勝宝八歳(七五二)に創始した十一面観音悔過に始まるとされます。以来、幾度かの危機を乗り越えながら、長い歴史を刻んできました。
この特別陳列では、「お水取り」の期間に合わせ、修二会や二月堂の歴史と信仰をたどる絵画や文書、練行衆によって実際に用いられた品々を展示します。また、江戸時代の二月堂焼亡と復興に関する史料や、当時のガイドブックともいえる名所図会に描かれた二月堂と修二会の姿なども御覧いただけます。 この展覧会をとおして、「お水取り」の伝統を身近に感じ、理解を深めていただければ幸いです。