「ひと」は、人が生み出す美術にとって、もっとも親密でありながら、もっとも謎めいており、崇高にも、悲劇的にもなりうる主題です。この永遠のテーマに近代の芸術家たちはどのように取り組んできたのか。
当館所蔵の絵画、彫刻、素描、版画から、「人」のイメージの諸相を探ります。
展覧会は5つの部門から構成されます
第1部では「自画像」などと呼ばれる「かお」に眼差しを集中させる作品を展示します。次に第2 部では首から下の「からだ」を表した作品、なかでも女性の裸像、首も手足もない「トルソ」などの芸術形式を考え直してみます。第3 部は子ども時代から老年まで、時の流れの中で「生きている」人間のさまざまな様相を表した作品を紹介します。第4 部では、戦争などで人間を否応なく「ひと」の世界から引き離す「死」を前にした人間の姿を考えます。最後に第5部では、「HITO」とは、という問いの下に、現代社会の中で生きる私たちの存在とはなにかを、ときにはユーモアをもってときには悲劇的に突きつめた作品群を紹介します。
岸田劉生、関根正二、佐伯祐三、児島善三郎、藤田嗣治、松本竣介、麻生三郎、阿部展也、堀内正和、高松次郎、吉田克朗、アルベルト・ジャコメッティなどによる約70 点の作品で構成された本展を通じて、「なんじ自らを知れ」という永遠の問いかけに立ち向かった芸術家たちの声に耳を傾けて下さい。