笠井誠一は1932年札幌生まれ。東京芸術大学油画科で伊藤廉教室に学び、同大学専攻科修了とともに、フランス政府給費留学生となり7年間滞欧。帰国後1967年より愛知県立芸術大学に赴任、教鞭をとるかたわら個展やグループ展を中心に活動し、1997年には愛知県芸大退官記念展が開催されました。現在は愛知県立芸術大学名誉教授、立軌会同人として制作を続けています。
笠井誠一はフランス留学中に、セザンヌ、キュビスム等からゴシック、ロマネスク美術へ遡り対面しながら、平面の中の構築的な表現を徹底して学びました。帰国後はストーブ、果物、ボトル、楽器など日常の身近なモチーフの組み合わせによる室内画や卓上静物画を描き続け、独特な世界を築いています。
シンプルで明確な輪郭線、単純化されたフォルム、抑制された温かな中間色を基調にした色彩により、画面の平面性を意識しつつ緊密な絵画空間を一貫して追求してきた氏の作品は、簡素で洗練された静かな詩的世界を展開しています。第24回安田火災東郷青児美術館大賞を受賞した≪二つの卓上静物≫(2000年)も、氏の静物画ならではの美しいバランスと色合いで、成熟した画家の簡潔な作風を示しています。
本展では、東京芸術大学在学中の初期作品から、受賞作を含む近作まで、作家自選の70余点を一堂に展示することにより、笠井誠一の制作の歩みをご紹介いたします。
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