笹岡了一(1907-87)は、新潟県中裏原郡金津村(現・新潟市秋葉区)生まれの洋画家です。ほとんど独学で絵を学び、1931年に帝展に入選。従軍体験を経て、戦後に次々と作品を発表し、1978年の日展において内閣総理大臣賞を受賞するなど華々しく活躍します。その一方で、千葉県流山市の自邸に研究所を設け、後進の指導にもあたりました。「絵を本当に分かっているのだなあと思わせる絵を描きたい」と語る笹岡にとって、「本物の絵」とは感動が持続する絵画のこと―「抽象には感動の持続性がない」と口にする笹岡がたどりついたのは、大胆で奔放な、抽象的ともとれる画風でした。同じテーマやモチーフを繰り返し描くうちに、神話や伝説の世界が現実味を帯びてゆき、現実であるはずの風景はおとぎ話のような幻想をともなってあらわされます。
「抽象と具象の接点みたいなところに何かある」……現実と非現実、日常と非日常の融解する狭間で自身の絵を追い求めた画家、笹岡了一の魅力を展観します。