明治40年(1907)に始まった文展(文部省美術展覧会)は、国が主催する美術展覧会として社会の注目を集めていました。
本展覧会では、大正・昭和における官展への出品作品を中心に画業を振り返ります。
大政奉還から30年ほど経った頃、能の見所ででかけた徳川慶喜の姿に、かつての「恭順」の佇まいを感じたことを思い起こして描かれた《慶喜恭順》をご紹介します。
また、画業の出発点に立ち返り、師・水野年方を官展最後の出品作として描いた《先師の面影》などを展示します。
人物の内面を豊かに描き出した肖像画のほか、明治の庶民生活を題材にした《朝夕安居》(昭和23年)をご覧いただきます。下町で穏やかな暮らしを営む人々の生き生きとした表現をお楽しみください。