"木村伊兵衛は、日本近代写真史上最も重要な写真家です。浅草の露店で出会ったカメラに魅了され、小学生の頃から寄席に通った早熟な子供は、生涯、庶民の生活と風俗を愛し続けました。
1929年、小型カメラ""ライカ""を手に入れ、報道写真の新境地を開きます。1951年にはフランスの写真家ブレッソンの""決定的瞬間""と出会い、木村の私的な眼差しとスナップの妙技は、より洗練を深めます。
彼が生きた「昭和」は、大戦をはさみ混乱する激動の時期でした。しかし彼の作品から受ける印象は驚くほど穏やかです。夢の国を撮影した沖縄、写真展の審査がきっかけだった秋田のシリーズは、報道写真の傑作といわれています。ポートレートでも、従来のスタジオ撮影を脱し、ライカの速写性を活かして、人物のいきいきとした瞬間の表情を捉えています。
本展では、彼の膨大な作品の中から厳選された何必館コレクション約70点を「戦前」「戦後」「庶民の町」「日本列島」「人物」「秋田」の6つのテーマで構成、展覧します。"