本展は、民藝運動が生活空間や展示空間も美の創作の対象としたことに注目し、特別にしつらえた静謐な展示空間で、美しい民藝をさらに美しく表現することを目指しています。展示品は、民藝誕生期に、民藝のモデルルームとして造られた三国荘のための蒐集品で、近代以前に作られた古民藝が中心となっています。
大正から昭和にかけて、柳宗悦(1889-1961)をはじめとした優れた眼の持ち主によって、日常雑器に新しい美が見出され、民藝(民衆的工芸)と名づけられました。しかし、素朴で稚拙とも見える雑具に美しさを見出すためには、優れた直観力が必要とされます。そこで民藝の鑑賞をより感動的な体験とするために、静かで、力強く、あるいは可憐な民藝美を存分に引き出す空間を演出しています。
また、民藝運動が、器の愛玩を超え、鑑賞によって真理の追究を目指したことはあまり知られていません。柳は、大らかで温かく、健康的な美を示す民藝を通して、人間の生き方、社会のあり方を探求しました。本展で、民藝の誕生に改めて光を当てることにより、世界の「MINGEI」としても注目されることを期待しています。柳の思想や民藝同人たちの想いも紹介しており、民藝美の豊かなこころを見るものに与えてくれることでしょう。