それまでの秩序が瓦解し、実力ずくで権威や身分が否定された時代―戦国時代。日本史上かつてない、破壊と再生のエネルギーに満ちた時代でもありました。同時代に生きていた人々は実際に目の前で起っている戦闘を記録している余裕などなかったのか、戦国時代を記した記録や文学の多くはもっぱら江戸時代に入ってからのものです。生き永らえた人たちがほっと一息ついた時、苦しかった前時代の記録を後世にとどめ遺そうという気持ちになったことは想像に難くありません。また太平の世が続き、侍たちのいくさの記憶も遠くなってゆくにつれ、合戦の様子や軍陣儀礼、武将の生き様などを、敢えて学ぼうとする流行もありました。活躍した英雄たちの逸話が伝承化されて人々に受け入れられ、芝居や講談となってさらに広がってゆくこともありました。
本展では、そんないくさや武将の資料をとおして、こんにちに伝えられた戦国乱世の様子を垣間見てみます。また、これまでご紹介の機会のなかった西尾市指定文化財の戦国武将文書や、新たに発掘された中世城館跡も併せてご紹介します。