1960年代よりニューヨークを拠点に活動しているアーティスト、中里斉(なかざと・ひとし、1936年生まれ)の展覧会を開催します。中里斉が生まれ育ったのは東京・町田。現在国際版画美術館が建つ芹ヶ谷が遊び場だったといいます。今回の展覧会は、記憶に刻まれたこの地で開催される、日本で初めての大規模な個展となります。
中里斉は抽象表現主義絵画を制作する画家がひしめき合っていた1960年代のニューヨークで、自らもフラットな色面と縦横の線、円弧、グリッド(格子)などを構成した抽象版画とタブロー絵画の制作をはじめました。
それらの作品を中里は、最初、既成概念の枠外からという意味で「線外から」という発想で制作します。ユニークなことに中里は、その発想に江戸時代の禅僧・仙がい(がいは涯のさんずいが無い字)の禅画の世界観を重ね合わせます。この「SENGAI」という語呂合わせのような重層的な発想は、時空を超えて、少年時代に町田で見た原風景のイメージへと発展したといいます。
展覧会では、こうした作品のほかに、9・11同時多発テロや広島に落とされた原爆をテーマとした作品などを展示し、中里斉の総体的なイメージ世界を体験していただきます。その体験から見えてくるものは何でしょうか。どうぞ気持ちを落ち着けて、ゆっくりとその世界を感じ、日常のなかでは気づかない何かを見つけてください。