江戸後期の浮世絵師 歌川広重(1797~1858年)は、役者絵や美人画などの人物画よりむしろ、風景画や花鳥画の新分野で活躍した画家です。広重が風景画家として名声を得たのは、天保4(1833)年に発表した「東海道五十三次」のシリーズでした。 <br/>広重の最晩年の作品となった「名所江戸百景」は、安政3(1856)年から同5(1858)年にかけて描かれた、広重の画業の中でも最大数を誇る浮世絵版画の連作です。江戸の何気ない風景が斬新な構図で描かれ、視覚的な面白さばかりでなく、多版刷りの技術にも目を見張るものがあります。<br/>また“ジャポニズム”の代表作として、ゴッホやモネなど西洋の画家に多大な影響を与えたことでも知られています。本展では「名所江戸百景」より四季折々の風景約30点と、歌川派の肉筆浮世絵を数点展示いたします。<br/>この機会に、多くの人を魅了した江戸の芸術をご堪能いただければ幸いでございます。