仏教は6世紀中頃に日本に伝来して以来、日本の社会、文化、政治、美術など広い範囲にわたって大きな影響を与えました。そして寺院に祀られた多くの仏像は、信仰の対象であるとともに極めて芸術性の高い作品として、今日まで多くの人びとを魅了してまいりました。このたび奈良の諸寺院のご理解によって、東京の美術館でこれらの仏像を展観できますことは、非常に意義深いものであります。
この展覧会は、法隆寺、東大寺、薬師寺、唐招提寺、興福寺、西大寺、大安寺、室生寺など奈良の古寺19寺院に伝わる飛鳥時代から室町時代の仏像45点、仏教工芸品19点、計64点(うち国宝3点、重要文化財45点)が一堂に展示される仏教美術の大展覧会です。特に法隆寺夢違観音像、室生寺釈迦如来坐像、西大寺塔本四仏像、唐招提寺如来形立像など珠玉の名品を、東京の都心で真近に観賞できる今後とも滅多にない絶好の機会になると考えております。
また、仏像の姿、形の宗教的意味や、時代による様式の変遷、材質と造像技法の違い、制作者である仏師のことなど、日本の多様な仏像そのものに関心をよせることも出来ましょう。
なお展示は、奈良の地をこよなく愛した、歌人・書家で美術史家であった會津八一の歌によって、仏像の美しさが一層浮き彫りにされることと思います。