近年になって自動車や機械が普及するまで、日本人にとって馬は、荷物の運搬や農耕など暮らしに欠かせない存在でした。日本にもともといなかった馬が、今から1500年ほど前に海を渡ってやって来ると、王や豪族たちの権威の象徴となりました。さまざまな儀礼の中で黄金に細工された馬具を身にまとい、荘厳に演出された馬もいました。
その後、中世には武士の重要な戦力として重宝され、数多くの馬が育成されたのです。一方では、神の乗り物である神馬として古代から篤く信仰され、飾り馬や競(くら)べ馬の行事が各地で行われてきました。
この特別展では、東アジアを舞台として馬と人が出会ってから現代に至るまでの悠久の歴史をたどります。また、展示室外でも馬と親しむための多彩なイベントや、乗馬体験、講演会などを開催します。この特別展が、馬に親しむための格好の機会となりましたら幸いです。