「小江戸」の愛称で親しまれている川越は、大正期の建築物を多く残すことでも知られています。そんな在りし日の面影をたたえる川越の地で、大正浪漫を代表する画家・竹久夢二の展覧会を開催いたします。
竹久夢二(1884-1934)は、明治38年(1905)、雑誌『中学世界』にコマ絵が掲載されたのを機に新進作家としての道を歩み始めました。当時ますます発展してきた印刷技術を背景に、本の装丁・挿絵・絵葉書・紙小物などに自らのデザイン感覚を発揮した夢二は、開放的な気風と社会不安の同居する時代に支えられて大衆に歓迎され、瞬く間に人気画家となります。彼が描くしなやかでどこか儚げな美人像や、単純明快で愛らしい図案は、現代まで変わることなく人々に愛好されています。
静岡市美術館に所蔵される志田コレクションは、質の高い日本有数の夢二コレクションです。特に、夢二最愛の女性、笠井彦乃への想いが綴られた直筆日記は白眉であり、夢二研究にとってもかけがえのない資料です。本展では、その日記はもちろんのこと、肉筆画・版画・自著装丁本など同コレクションの夢二作品約160点を一堂に公開し、甘美な夢二芸術の真髄に迫ります。この機会に夢二作品の世界を存分にお楽しみ下さい。