ノーマン・ロックウェルは、アメリカで最もよく売れた雑誌「サタデー・イブニング・ポスト」の表紙を、47年間もの間、毎週のように描き続け、大変な人気とともに「アメリカに愛された国民的イラストレーター」と評されています。
ロックウェルは、物語や表紙のイラストに、徹底した制作態度でのぞみました。制作の一例を紹介すると、まずモデルを使いラフデデッサンを行う。たくさん写真を撮り、再び木炭によるデッサンを行う。これに彩色すれば仕上がる。が、しかし、突如作品が写真に縛られているように感じると、締切間際の苛立ちの中でも妥協することなく、下絵とは全く違った構図の作品を一気に完成させたことも、しばしばありました。彼のマンガのように誇張されたユーモラスな作品は、徹底した下絵づくりと最終的に彼の柔らかなイマジネーションによって、どの絵にも独特の「おかしみ」と「やさしさ」がたたみ込まれていったのでした。
貧しくとも心やさしいアメリカ国民の実生活を、あらためて写真で切りとったカメラマン、ケヴィン・リヴォーリの写真作品も交えて展示いたします。カメラマン、リヴォーリが追ったロックウェルの世界もこの展覧会の見どころの一つとなっています。