和歌~やまとうた~は日本の文芸の首座を占め続けてきました。なかでも天皇や院の命で編まれる勅撰和歌集の撰者になることは、歌人にとってこの上ない名誉でした。
冷泉家は、平安・鎌倉時代の歌人で勅撰和歌集の撰者となった藤原俊成、定家、為家を祖にもち、歴代が宮廷や武家の歌道師範をつとめた家柄です。京都御所にほど近い同家の蔵には、800年の伝統のなかで蓄積された、勅撰集、私家集、歌学書、古記録などが収められています。それらの書物は「冷泉家時雨亭叢書」として刊行され、全84巻が完結しました。これを機に、守り伝えられた古典籍の精髄を一堂に会し、これまでにない規模で展覧します。
藤原俊成筆『古来風躰抄』、定家筆『古今和歌集(嘉禄二年本)』『後撰和歌集(天福二年本)』『拾遺愚草』『明月記』の国宝5点をはじめ、300点以上の重要文化財を前・後期に分けて公開します。美しい料紙と流麗なかな文字の取り合わせがみごとな平安時代の装飾本や、華やかに表装された天皇直筆の書「宸翰」が、みやびな王朝美の世界へと誘います。