現在、アジア美術の動向は世界のアートシーンで注目の的となっており、中でも急激な経済発展を背景に成長する中国美術は、その最前線に位置づけられています。天安門事件前後に展開された反体制的な前衛アートもその一つですが、とりわけ5年に一度開催される政府主催の美術展「全国美術展」は、最も権威ある登竜門として中国国内から数万点の応募があり、その規模と内容そして水準の高さは中国随一といっても過言ではありません。各地の部門ごとの展覧会で受賞作を決定した後、北京の中国美術館で約500点が受賞作品展として一堂に会され、その後、さらに厳選された作品が「現代中国の美術」展として韓国や日本等で紹介されています。
日本では、1988年以降、過去5回にわたってこの「現代中国の美術展」が開催され、卓越したリアリズムや、伝統的な技法によるエネルギッシュな表現などで、毎回衆目を集めてきました。今回は第11回全国美術展の受賞作品から86点を厳選し紹介いたします。
中国画、油彩画、版画、漆絵、彫刻、水彩画、アニメなどバラエティに富む作品群は、現代中国の現状を反映するかのようにパワー全開で、中国美術の動向をリアルタイムで展観できる絶好の機会となるでしょう。
本年は平城遷都1300年の記念すべき年です。8世紀、盛唐の最先端の芸術・文化を摂取し花開いた奈良の都の往時の記憶をたどりながら、現代の中国美術にふれ、新しい日中文化の交流と親善を促す機会となれば幸いです。