オノデラユキ(1962~)は、1990年代から頭角を現し、日本の写真表現に新風を吹き込んだ新世代の写真作家です。現在はパリを拠点に国際的に活動の場を広げています。オノデラの活動歴は1991年、「写真新世紀」第1回公募展で優秀賞を受賞したことに始まります。この公募写真展は、既存の枠組みにとらわれない新しい才能の発掘を目的に始められたもので、独学で写真技術を身につけたオノデラは、その第1回受賞作《君が走っているのだ、ぼくはダンボの耳で君を待つ》でミステリアスな視覚世界を表現し、高く評価されました。
1993年にパリに活動拠点を移すと、さらに造形性、創造性に磨きがかかり、一般的な「写真」という枠組みに収まらないユニークなシリーズを次々と発表。1996年には《古着のポートレイト》シリーズで第21回「コダック写真批評家賞」(フランス)を受賞。2003年、《古着のポートレイト》、《カメラ》、《真珠のつくりかた》など9シリーズを収めた作品集『カメラキメラ』(水声社)で第28回木村伊兵衛賞を受賞しました。また、2006年にはフランスにおける最も権威ある写真賞「ニエプス賞」を受賞しています。
彼女の作品は、ある時はカメラに細工を施し、ある時はシュールなコラージュによって、またある時には思わぬアングルから被写体をとらえるなど、常に独自の作品世界を創り出しています。
本展では当館の新収蔵作品「Transvest」、「12speed」を含む主要シリーズを集め約60点を展示。日常の中に潜む謎めく空間を写し出し、私たちを視覚の迷宮へと誘ってくれるオノデラユキの世界をたっぷりとお楽しみください。