伊萬里焼は日本で最初に焼かれた磁器で、江戸時代の初めである1610年代、肥前(佐賀県)有田地方で生まれました。その初期は染付を中心として、白磁や青磁、琉璃釉などが生産されましたが、色絵の製品はまだ作ることができませんでした。高火度による本焼きした素地に色絵具で文様を描き、さらに低火度で焼き付ける色絵の技術は、染付から遅れること約30年、1640年代に導入されます。さらにその後、金銀の焼付け技法も開発されると技術はまたたくまに向上し、古九谷から柿右衛門、金欄手といった優れた色絵製品が、次々と世に送り出されることとなりました。
今回の特集陳列では、赤や青、黄、緑、金などの極彩色が器面を飾る伊萬里焼の色絵の中で、春にふさわしい梅、桜、牡丹を主題とした華やかな製品をご覧いただきます。また、白くつつやかな磁器の肌に藍色が映える染付は、過ごし難い日本の夏に涼を呼ぶ器といえます。今回はそうした涼やかな意匠のものを、初期から江戸後期まで集めてみました。華やかな色絵と、涼やかな染付の共演をお楽しみいただきたいと思います。