見慣れた景色のなかで、いつも通りの日常を過ごしていても、何かのきっかけで現実に対して違和感を覚えることはないでしょうか。
私たちが直接知覚できる現実は、多様なメディアがもたらす圧倒的な情報に飲み込まれ、現実と虚構の区別さえ曖昧になりがちです。私たちは、私たちを取り囲む世界に対して、そして私たちが生きているということに対して、確かなリアリティーを感じられなくなってはいないでしょうか。それは、現代社会が抱える様々な問題のひとつの原因とも言えます。
そんな「酸化した」リアリティーのなかで育った現代のアーティストたちは、作品をつくるという行為そのものに生のリアリティーを求め、また虚構の世界を強固に築くことによって、作品のなかにリアリティーを生みだそうとしているように思えます。
当館では、30歳以下の若いアーティストを対象とした公募展「群馬青年ビエンナーレ」を隔年で開催しています。応募作品は多種多様ですが、毎回、その時々の時代がもつ空気感のようなものを感じ取ることができます。
この展覧会でとりあげるのは、2000年代の「群馬青年ビエンナーレ」において大賞、優秀賞を受賞した7人のアーティストです。彼らの作品には、それぞれが求めるリアリティーがたちあらわれ、それと同時に、現代の若者をとりまく現実が映し出されることになるでしょう。