このたび笠岡市立竹喬美術館では、卓越した技法を駆使して数々の魅力的な作品を生み、国内外で高い評価を得ている深沢幸雄の展覧会を開催します。
1924(大正13)年に山梨県南巨摩郡増穂町に生まれた深沢は、今年86歳を迎えようとしていますが、制作に対する意欲は旺盛であり、さらなる表現の可能性を模索しています。近年の銅版画への取り組みは、2007年に故郷の山梨県立美術館で開催された「深沢幸雄展―いのちの根源を謳う」において発表された《不死鳥に舞う》《少女と鳥》《想念と渦》により示され、かつての硬質な構成に柔和な形態が加わり、心情の温かさが直接的に感じられる表現に移りつつあります。
今回の展覧会では、近現代版画史におけるマエストロともいえる深沢の技能の高さと表現の多様性に注目して、版芸術の限りない可能性をさらに拓きつつある深沢の軌跡を、じっくりと辿りたいと思います。この展覧会のために制作された銅版画8点、また近年新鮮な魅力を放ちつつあるガラス絵の新作10点、さらに詩文2点を併せた約95点により、その稀有なる業績をお楽しみください。