人々の生活を絵画で表現することは古くから行われてはきましたが、ほとんどは身分の高い貴族や武士などの世界を扱ったものでした。しかしながら、年中行事などを描いた絵巻物や洛中洛外図屏風などに至っては、主役の方にさまざまな階層の人々が登場し、ここでは脇役ながらも庶民の日常生活が垣間見られ、風景の中で生き生きと働く人々の姿が認められます。このような脇役たちが絵画の中で主張しはじめ、やがて主役として登場してくるのは、浮世絵が発達をとげる江戸時代になってからでした。
明治に入ると近代的な感覚で捉えた風俗描写も現れ、また新たに西洋思想のもとで社会観も加わるなど、働く姿も作者の内面的な意思を持って表現されるようになりました。
本展覧会では、所蔵品から「はたらくひとたち」をテーマに作品を紹介し、歴史的な背景や、さまざまな人物表現から、作品に込められた作者の思想を探ろうとするものです。
また、夏休み期間中の子ども達にとっても、学校の先生をはじめ「はたらくひとたち」は身近な存在です。お友達同士で、ご家族みなさまで、絵画の中の「はたらくひとたち」を探して、何をしているところなのか、どんな気持ちで働いているのかなど、想像をふくらませながら楽しんでいただければ幸いです。