本展は、不可視ともいうべき極小の点描によって描かれた作品により視覚の曖昧性を喚起し、あえてみえることから遠ざかろうとする方法論を通して、みるという行為を契機に立ち上がる知覚と思索の深化を誘う野村和弘の作品と、周囲の様々な情報を鏡面のように映し込みながら、視線を跳ね返すことなく作品の内奥へと導く深遠なる藍を主体とした色層の厚みと作品の破格の大きさによって構築される巨大な絵画空間の創出により、視覚を含む身体性を通して作品とみるものとの間に多義的な関係性を生み出そうとする東島毅の作品をとりあげます。
作品の提示において対照的なアプローチを示す野村と東島の作品は、共に作品をみるという思索的な行為の本質を鋭く照射しており、本展を通して、あらためて作品をみることの意味を問い直すと同時に、今後の活躍が期待される両者の作品世界を紹介いたします。