儒教精神や道家思想が脈打つ朝鮮時代(1392-1910)、人々の住まいは身分や性別によって厳格に区別されていた。そこに用いられた家具などの木工品にも、陶磁器や絵画といった他の美術工芸品と同様、時代が反映されている。
男性の書斎兼応接室である「サランバン」の調度品には、学識層の美意識として息づいていた清貧簡素を体現する素朴なものが尊ばれた。一方、女性の部屋「アンパン」では、家人の長寿や繁栄を螺鈿、華角で装飾した豪華な家具が好まれるなど、男女の趣向が対照的に表れている。
適材適所な実用に即した造形に、所有者の美意識が感じられる家具調度を通し、人々の暮らしを紹介する。