絵を描く仕事で名を成すためには、生まれながらの感性に恵まれることはもちろんのこと、日々いかに研鑽を積んできたかによるものが大きいといえます。かつて、女性画家の存在そのものが希であった時代では、たとえ豊かな感性を持ち合わせていたとしても、修行を積む環境がありませんでした。このため、江戸時代などで活躍した女性画家たちをみると、おしなべて家人などに画家がいたか、日常生活に左右されない裕福な家庭に育ったかのどちらかでした。
明治になって、社会が大きく変わりゆくなかで、制度も次第に整えられ、女性が絵を学ぶ機会もだんだんとですが得られるようになりました。それでも、先人たちが乗り越えてきた苦労は並大抵なものではなかったはずですが、逆にそれらがもの言わぬ力となって作品に反映したことは見逃せない事実でしょう。
本展では、館蔵品から、女手ひとつで育ててくれた母に支えられた官展系美人画の名手・上村松園、前人未到ともいえるエネルギッシュな作品を描き続けた昭和洋画の代表画家・桜井浜江など、明治から現代に至る女性画家に焦点をあてて紹介いたします。
また、特集展示として、平成21年度の新収蔵品を初公開。青梅市ゆかりの田中以知庵ほか、新たに当館のコレクションとなった作品をご紹介します。