元禄という時代は、関ヶ原の合戦からおよそ100年が過ぎた時期にあたり、合戦に参加した人々が身近から去り、戦国の世を直接体験したことのない人々が社会の大半になった時代です。人々の意識も大きく変わりつつありました。
こうした転換の時代に将軍となった徳川綱吉は、後世「犬公方」の由来ともなった「生類憐れみの令」を発したことで知られています。人を含む生き物全てを慈しみ、その生命を大切にしようとする「生類憐れみの令」は、戦国時代の余習が燻る殺伐とした社会においては、およそ現実味をもちえない法令であり、まさに「武断政治から文治政治へ」の転換期にあった元禄時代を象徴する法令といえます。
また綱吉の治世は、町人出身の菱川師宣、尾形光琳などが文化の担い手として登場し、平和な時代を謳歌する華やかな「元禄文化」が生み出されました。
本展では、平和化が進行する元禄時代に将軍となった徳川綱吉の人柄をしのばせる直筆の絵画・書跡などを多く展示するとともに、平和のなかで発展する華やかな元禄文化を代表する作品・資料を紹介していきたいと思います。