今から150年前の1859(安政6)年、江戸幕府が国際貿易を目的に定めた5港(函館・新潟・横浜・神戸・長崎)を開港地として、米・英・仏・蘭・露との修好通商を行う「安政の5ヶ国条約」が発効されました。以来、これらの五都市は外国文化と交流しながら、それぞれ独特の情緒ある歴史と文化を築いています。このたびの記念展「開港地を謳う」は、開港地である各都市にちなんだ詩歌や文学を題材とする現代書作品を紹介するものです。詩歌に詠まれ、文学に語られる情景は、絵画や写真、映像のように視覚的な情報を与えてくれるものではありません。しかし、それだけに無尽の想像と可能性を秘めた文字の力、言葉という文化の崇高さを教えてくれます。先人が詠み綴った詩歌や文学に親しみながら、今日の私たちと共にある文字や言葉の表現にふれることは、過去を想い、未来を創る原動力であり、とりわけ現在を見るめるにあたって貴重な営みであることを再確認したいと思います。
本展では、日本詩文書作家協会会員であり、現代日本を代表する書家の作品252点を展観いたします。開港地のさまざまな風景やそこに生まれた詩情は、墨と筆によって生き生きと表現され、観る者を過去や未来の港へといざなってくれることでしょう。大らかに、そして高らかにうたいあげられた各都市の風光を思い浮かべながら、現代書の世界をご堪能下さい。