古代から近世まで、中国をはじめとした東アジアとは、圧倒的なまでの文化的な源泉でありました。それが近代の脱亜論的な考えの中で、逆に他のアジアの国を支配し、その盟主として、西洋に対していくことになります。そして日本近代の芸術家は、西洋への志向と自らの伝統的感性とのあいだで、激しい内的な葛藤と軋轢を等しく抱え込んできました。その中で美術家たちにとって、アジアはどのように機能したでしょう。
文人画・歴史画における近世までの伝統的主題から、明治においては政治経済的な動向とリンクした実現のアジアを描き出すようになります。あるいは逆にエキゾチシズム溢れる最も近い異国の風俗は繰り返し画家たちの創作欲を刺激しています。さらに重要のことは、そのような中で、対西洋の構えという緊張感から解き放たれ、慰安される風景画として、あるいは外部にあらためて発見されあ「故郷」としても東アジアは機能したと思われることです。そこで、多くの作家は精神的に開放されたのではなかったでしょうか。安井曾太郎・梅原龍三郎という日本洋画の大成者はアジアでこそ自らの様式を確率し、開花させたといえましょう。また日本人にとって広漠たる大地とは、内的荒野を反映させたものとして、これまでにないイメージ源ともなっていたことが想像されます。このように様々な点で、日本とも、西洋とも異なるアジアとは、精神的な第三の場として、近代の美術作家に大いに機能していた可能性があります。本展覧会は、日本近代の日本画家・洋画家さらには写真家たちがどのようにアジアをイメージしてきたかを107作家・約300点で広く紹介するものです(前期前後で大幅な展示替えを行います)。