近代美術の巨匠ピカソ(1881‐1973)が生涯に制作した作品数は、絵画・彫刻・陶器・版画などおよそ8万点ともいわれますが、その中には2,000点を超える版画作品も含まれています。その数は他の画家の比ではなく、ピカソ芸術における版画の重要性と、版画創作に注いだ芸術家の情熱を示しています。版画創作活動は晩年まで続き、80歳を過ぎた1968年には半年間で347点も制作し、周囲を驚かせたこともあります。
ピカソが最初に版画を手がけたのは1899年、バルセロナ時代のことですが、1904年にパリに定住して以後、本格的に制作するようになります。第2次大戦頃までは銅版画を中心としていましたが、1945年に著名な刷師フェルナン・ムルロと出会って以後、リトグラフを手がけるようになり、表現が多彩になるとともに制作量も一気に増大し、ピカソの版画作品の評価を高めることになりました。
本展覧会は北海道岩内町の財団法人荒井記念美術館所蔵の旧ミッチ・ミラーコレクションから厳選された作品で構成されるものです。初期のエッチングやドライポイント作品、リトグラフ、リノカットによるカラー版画作品など、初期から1960年代の円熟期までの作品約120点を、「画家とモデル」「闘牛と古代神話」「男女あるいは抱擁」「女の肖像」「静物、サーカス、男の顔など」といった主題に分けて一堂に紹介します。