丸みを帯びた造形による少女や親子の愛らしい姿。木や人、ロバ、遺跡などが点在する牧歌的な風景の彫刻表現。日本の現代彫刻において独自の様式を拓いてきた山本正道が生み出す世界には、ゆったりとした時が流れ、懐かしさとやさしさに満ちています。その素材は、大理石、砂岩、石灰石などの石彫や、粘土を焼成したテラコッタ、ロウ型鋳造によるブロンズなどさまざまですが、いずれもその風合いを生かしながら、おおらかなかたちの詩をうたっています。
山本と北海道との縁も深く、余市出身の陶芸家山本正年を父にもち、自身も母の故郷の小樽に幼少期に住んだことがあります。その後もたびたび来道するなかで北大のポプラ並木をモチーフとした作品なども手がけています。また、山本の作品は全国各地に設置されていますが、北海道内でも北道大学構内の《新渡戸稲造顕彰碑》をはじめ洞爺湖畔、JR北広島駅など各地で見ることができ、人々に親しまれています。
本展は、ローマ留学中に制作された初期の作品から最新作までの約40年にわたる彫刻35点と素描約40点を展示する北海道で初めての大規模な展覧会です。山本正道の詩情溢れる世界をお楽しみください。