木村伊兵衛(1901~1974)とアンリ・カルティエ=ブレッソン(1908~2004)は、日本とヨーロッパと活躍した場は異なりますが、ともに近代的写真表現を切り拓いた写真家として重要な存在です。この二人は、ともに「ライカ」というカメラを人間の目の延長としてとらえ、揺れ動く現実の諸相を切り取り、それまでになかった新しい「写真」のあり方を証明したといえるでしょう。二人の作品には普遍的ともいえる共通性を見て取れますが、その一方で、日本とヨーロッパとそれぞれが生きた現実の違いは、微妙ではありながら決定的な差異として見て取れることも重要な事実です。
本展では、木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソンという偉大な二人の写真家の個性を堪能するだけではなく、近代的写真表現が絶対的普遍でありながら、同時にきわめて個別的相対的なものであったということを見ようとするものです。木村伊兵衛作品は東京都写真美術館のコレクションを中心に、、またアンリ・カルティエ=ブレッソン作品は当館のコレクションを中心に国内各美術館の所蔵作品を含め、全体で約150点を構成する予定です。