現在でも私たちを魅了する浮世絵は、17世紀後半頃から風俗画を基盤として誕生し、庶民の娯楽の場であった歌舞伎や遊郭に取材した役者絵・美人画を中心に発展しました。とりわけ、化政期以降幕末に入ると、さらに新しいジャンルが次々と生まれ、また数々の多才な浮世絵師達が活躍するようになります。 風景画を完成させた北斎と広重、艶のある美人画や生動感ある役者絵で人気をはくした国貞(三代豊国)、躍動的な武者絵や風刺画、戯画に幕末の世相を反映させた国芳、開国によるエキゾチックな雰囲気を描写した貞秀の横浜絵などは、時代の空気とともに、政局への関心、異国への興味など当時の人々の視線や生活をも伝えています。 本展覧会では、国際浮世絵学会常任理事・中右瑛(なかうえい)氏のコレクションから、肉筆約20点を含む浮世絵約150点を展示いたします。成熟した町人文化を背景に生まれた幕末浮世絵の世界をぜひお楽しみください。