和田三造(1883-1967)は1907年の第1回文部省美術展覧会(文展)に出品した「南風」により最高賞(二等賞)を受賞し、翌年の第2回文展でも連続して最高賞を受賞するなど、近代日本洋画において顕著な活躍を示しました。
「南風」の画家として彼の名はすっかり定着してしまいましたが、しかし彼の関心は油絵だけにはとどまりませんでした。
本展では様々なジャンルにチャレンジしたマルチ・タレントとしての和田三造に注目したいと思います。
油彩はもとより、日本画、版画、色彩研究、染織、そして日本人初のアカデミー賞を受賞した映画等の舞台美術、漫画、アニメーション、ポスター、図案、工芸、建築物デザインなど多種多様な分野で足跡を残した和田の創造世界にも注目していきたいと思います。
和田についてはともに生野の三人と呼ばれる青山熊治、白瀧幾之助と合わせてその画業が回顧されるほかは、1979年に北九州市立美術館で開催された個展を除いて大々的に取り上げられる機会はありませんでした。
本展は30年ぶりの和田三造展として、初期から晩年に至るまでの業績の全体像に迫ります。