1948年に結成され、日本の近代陶芸史のなかにオブジェというものを導き入れて、その後の陶芸界の方向性を大きく変えた走泥社。その結成メンバーであり、前衛陶芸の旗手とされる八木一夫、山田光、鈴木治、のちにその活動に加わった熊倉順吉は、中国や朝鮮の古陶磁といった古典の模倣からの決別を目指す走泥社の活動のなかで、器をへこませ、口をふさぎ、そして壺を切り、器の概念を解体するように新しい造形に取り組み、やがて各々のオブジェにおける表現を確立します。しかしながら、彼らの活動の足跡をたどると、オブジェ作品に取り組む一方で器制作にも取り組んでいた姿が現れてきます。前衛陶芸家と位置づけられる彼らにとって、「器」とはいったいどのようなものだったのでしょうか。
本展ではこの八木一夫、山田光、鈴木治、熊倉順吉の4人が手掛けたオブジェ作品と器の作品をあわせて紹介し、陶芸における造形の可能性を切り拓いた彼らが臨んだ器への思いを探ってみたいと思います。