水彩画は、幕末から明治にかけて油彩画とともに日本に紹介され、その描法の手軽さなどから広く普及し愛好されるようになりました。
はじめ、油彩画制作の一過程の中で描かれたり、外国人向けの日本の風物を紹介する土産や輸出用としても多く描かれたりしていましたが、明治後期になるとヨーロッパで学んだ油彩画家の浅井忠や、水彩画家三宅克己らが優れた作品を描き、その普及にも努めるなど、いわゆる水彩画の全盛期を迎えます。大正期には、古賀春江などが個性的な作品を残し、昭和に入ってからは、中西利雄らによって不透明画法が紹介されるなど新たな展開がみられ、それに続く小堀進、春日部たすく、三橋兄弟治などの活躍によって水彩画はより多彩な表現の広がりを見せるようになります。
今日、水彩画は学校教育に取り入れられ、私たち日本人にとってもっとも慣れ親しんできた身近な絵画技法のひとつとなっています。本展では、その独特の軽やかさ、伸びやかな筆遣いなど水彩画ならではの魅力を、明治から平成にかけて描かれた水彩画の秀作25点により紹介します。