いま最も注目されている自然写真家・今森光彦(1954年-)は、子どもの頃より昆虫の生態と美しさに魅了され、世界中の昆虫を求めて精力的に活動してきました。既成の生態写真にとらわれない独創的で卓越した表現は、国内だけでなく世界各国で高い評価を受けています。
近年では、故郷である琵琶湖周辺を中心に「里山」と呼ばれる環境を見つめ、そこでの人と自然の共生を撮りつづけてきました。その仕事は写真表現にとどまらず、企画に携わったNHKの番組「映像詩・里山」シリーズでは、世界各国で数々のグランプリを受賞しています。
本展覧会は昨夏、東京都写真美術館で開催され好評を得たもので、地球上のありとあらゆる辺境を踏破して撮影された<世界昆虫記>、国内の身近な自然を捉えた<昆虫記>から、昆虫の標本資料、取材時のフィールドノートまで約200点が紹介されています。これまでの活動を集大成した本展で、今森は第28回土門拳賞を受賞しました。
静岡アートギャラリーでは、この夏、本展覧会をあらためて近隣文化施設である静岡科学館る・く・る、静岡音楽館AOIとともに3館共同事業「夏休み昆虫の世界」の1つとしておおくりいたします。静岡での開催にあたっては、今森が子どもの頃熱中し、ライフワークとして近年新たな展開をみせる切り紙作品もあわせて展示いたします。
この地球上に昆虫が登場して約4億年。昆虫に注がれる今森のまなざしは、私たちにその小さな命の秘密と、それを育む自然環境を考えるきっかけを与えてくれることでしょう。驚きと発見に満ちた神秘の世界を、是非ご覧下さい。