今をさかのぼること6000年以上前、きらびやかな黄金を使うことを知っている文明が、ヨーロッパの南に存在しました。エジプト王朝が確立するよりはるか昔、日本でいえば縄文時代に当たる頃、彼らはまばゆい光輝に彩られた文化を育んでいたのです。今日のブルガリアで発見されたこの謎の黄金文明を、さらに発展させたのが、本展でご紹介するトラキア文明です。
勇敢な騎馬民族としてトロイ伝説にも登場するトラキア人は、紀元前5~3世紀初めに今日のセルビアやルーマニア近辺で絶大な勢力を誇っていました。ギリシアやペルシアなど、周辺の高度な文化と交わる中で洗練を加えた作品の数々は、古代の栄華を物語るとともに、彼らがすでに高度な芸術性を達成していたことを示しています。
本展では、21世紀の大発見と言われる「トラキア王の黄金のマスク」を、日本初公開。さらに「世界最古の黄金製品」も展示されます。トラキア戦士たちの兜や鎧、日々の生活の品々などと共に、数千年の時を経て甦った輝きをぜひその目でお確かめ下さい。