「人形がただ1回転するだけで、物語が成立するかもしれない…」
八王子市夢美術館では2月に開催されたプレビュー展に続き自動人形師として知られるアーティスト ムットーニ氏(本名 武藤政彦)の作品世界を紹介します。
ムットーニ氏は、1956年に横浜市に生まれ、現在は八王子と同じ多摩地域の国立市に在住するアーティストです。その作品は箱などに仕込まれた人形や様々な演出装置によってある物語が展開されるというもので、自動人形からくり箱とも言われます。アーティスティックでありながらも、油絵や彫刻といった既存のファインアートとは異なるこの表現、これらはしばしば西洋のオートマタ(自動人形)や日本のからくり人形のようと称されます。しかし、似ている点はあるにせよムットーニ氏の作品は人形や装置の多様な動きに加え、音楽、効果音、光(照明)、そして時には作家本人の語り(口上)などが交錯し、観客はまるで映画や演劇を観ているような感覚に陥ります。こうした印象は作品の主役があくまでその場で繰り広げられる物語や空間にあり、人形や動物、モノなどのリアルな動きの再現にないという点でオートマタなどとは違った独特な表現方法と言えるでしょう。故にムットーニ氏の作品は総合芸術と言われ、また、そのことから作家本人のみならず作品そのものがムットーニと呼ばれることがあるのです。今から20年あまり前に登場したムットーニ氏の自動人形からくり箱、その独創的な表現に魅了され今日では各界をはじめ多くの一般のコレクターや熱狂的なムットーニファンが存在しています。
今回の展覧会は、前回のプレビュー展と比べ作品数も大幅に増加、展示構成もさらに多彩となった内容です。また、過去に登場した代表作だけでなく本展のために制作された作品も展示します。作家本人による上演会やナイトツアーも交えながら、光、動き、そして音楽と言葉が織りなす箱の中の物語「ムットーニ ワールド」を展開します。